こんにちは、コエバコ管理人の伊織です。
今回は「メリーバッドエンド(メリバ)」をテーマにした、狂気と共依存の物語です。
閉じ込める側と、される側。被害者と加害者。
その境界線が徐々に曖昧になり、二人が選んだ「歪んだ幸福」とは一体何なのか。
密室という特殊な状況だからこそ、声のトーンや息遣いといった細やかな表現力を磨くサポートになる台本です。
ドロドロとした重い愛を演じたいペアに、ぜひ挑戦していただきたい作品に仕上がりました。
作品情報
- 人数:2人(性別不問)
- 時間:約3~4分
- ジャンル:メリーバッドエンド / サスペンス
- あらすじ:密閉されたコンクリートの部屋で目覚めたA。足には重い鎖。目の前に立つBは「外の世界はもう終わった。ここは安全だ」と微笑む。Bの歪んだ嘘に気づいた時、Aが選んだ選択とは。狂気と依存が交差する密室劇。
登場人物
- 【A】:閉じ込められている側。
最初は突然の監禁に対して激しく取り乱し、純粋な恐怖を抱く。しかし、次第にBが抱える「自分への異常な執着と弱さ」に気づき、逃げることよりもBを受け入れることを選ぶ。後半にかけての感情のグラデーションが演じどころ。 - 【B】:閉じ込めている側。
Aを何よりも愛しており、自分だけのものにするために「外の世界は毒だらけだ」という嘘をつき続ける。一切の悪意はなく、ただ純粋にAを愛でている「穏やかな狂気」を持つ。Aに依存しきっており、見捨てられることを何よりも恐れている。
本編
(薄暗く、窓のないコンクリートの部屋。微かに消毒液の匂いが漂っている。冷たい床の上で、Aがゆっくりと重い瞼を開ける)
【A】
「……ん……ここ、どこ……?」
(体を起こそうとした瞬間、ジャラッという重く冷たい鎖の音が部屋に響き渡る)
【A】
(足元を見て、息を呑む)「え……な、なにこれ。足に、鎖……?」
【B】
(扉が静かに開き、微笑みながら近づいてくる)「あ、目が覚めた? おはよう。よく眠ってたね」
【A】
「【B】……? どうしてあんたがここに……いや、それよりこれ何だよ! なんで俺(私)が鎖に繋がれてるんだよ!」
【B】
(怯えるAを愛おしそうに見つめながら)「暴れないで。怪我するよ? ……あぁ、可哀想に。まだ混乱してるんだね」
【A】
「混乱もするだろ! 外してくれよ! ここから出してくれ!」
【B】
(困った子どもをあやすように、ゆっくりと首を振る)「……だめだよ」
【A】
(理解が追いつかず、声が震える)「は……?」
【B】
(Aの頬にそっと手を伸ばし、優しく諭すように)「外に出たら、死んじゃうよ? ……もう、外の世界は終わったんだ」
【A】
(Bの手を振り払う)「終わったって……何を言って……」
【B】
(手を払われても微笑みを崩さず)「変な病気が流行ったのか、争いが起きたのか……とにかく、外の空気はもう毒だらけなんだ。生き残ったのは、僕(私)たちだけかもしれない」
【A】
(必死に鎖を引きちぎろうともがく)「嘘だ……そんなの、信じられるわけないだろ!」
【B】
(暴れるAを悲しそうに見つめ)「嘘じゃないよ。君を守るために、必死でここを作ったんだ。ここなら安全だよ。水も食料もある。僕(私)がずっと、君の世話をしてあげるから」
【A】
(恐怖と絶望で息を荒らげる)「嫌だ……帰せよ、家に帰してくれよ!」
【B】
(Aをきつく抱きしめ、耳元で甘く囁く)「ここが家だよ。……ねえ、君は何も知らなくていいんだよ。怖いことは全部、僕(私)が引き受けるから。君はただ、ここで僕(私)に愛されていればいいの」
(間)
【A】
(モノローグ)
あの時の【B】の目は本気だった。狂ってる。そう思った。
窓ひとつない、コンクリートの部屋。
時間の感覚もわからないまま、ただ【B】に餌を与えられるだけの日々が過ぎていく。
(ふと、厚い壁の向こうから小鳥のさえずりが微かに聞こえる)
【A】
(弾かれたように顔を上げる)「……ん?」
【B】
「どうしたの? スープ、冷めちゃうよ」
【A】
「今、鳥の声が……」
【B】
(少しだけ声がこわばる)「……気のせいだよ」
【A】
「いや、聞こえた。確かに……」
(再び、チュン、とはっきりした鳴き声が響く)
【A】
(モノローグ)
聞こえた。鳥だ。
……外気が毒だらけなら、鳥なんて生きているはずがない。
やっぱり、【B】は嘘をついている。世界なんて終わってない。
今すぐこれを指摘して、叫んで、逃げ出せば……。
【B】
(スプーンを置き、すがるような目でAを見つめる)「……聞こえないよ。何も」
【A】
(息を呑んで言葉に詰まる)「……【B】」
【B】
(震える手でAの服の裾を掴む)「外には何もない。地獄しかないんだ。……ねえ、信じて? ここから出たら、君は不幸になるだけだ。僕(私)がいないと、君は生きていけないんだよ」
【A】
(モノローグ)
必死な顔。
その表情を見て、腑に落ちてしまった。
ああ、こいつは……俺(私)がいないとダメなんだ。
こんな子供じみた嘘をついてまで、俺(私)を繋ぎ止めたいんだ。
【B】
「ねえ、お願い。外に行きたいなんて言わないで……ひとりぼっちは、怖いよ……」
【A】
(モノローグ)
鎖に繋がれているのは、どっちだ?
この手を振り払って外に出たら、【B】は壊れてしまうだろう。
……それなら。
(衣擦れの音。Aがゆっくりと腕を伸ばし、震えるBの背中に抱きつく)
【A】
(耳元で優しく囁くように)「……ごめん。そうだね、気のせいだったみたいだ」
【B】
(ビクッと肩を揺らし、恐る恐る顔を上げる)「え……?」
【A】
(Bの髪をゆっくりと撫でながら)「【B】の言う通りだよ。外は怖い場所なんだろ? そんなところ、行きたくないよ」
【B】
(安堵で瞳を潤ませる)「……! そう、だよね! わかってくれたんだね!」
【A】
「ああ。俺(私)には【B】が必要だ。……ずっと、そばにいてくれる?」
【B】
(感極まった声で、Aにしがみつく)
「うん……! もちろん! ずっと、死ぬまで一緒だよ!」
【A】
(Bの背中に腕を回し、暗く微笑む)「ふふ……ありがとう」
【A】
(モノローグ)
外の世界なんて、どうでもいい。
お前をこんなに狂わせられるのは、世界中で俺(私)だけなんだから。
【B】
(幸せそうに目を閉じて)「愛してるよ」
【A】
「ああ……俺(私)もだよ」
管理人のワンポイントアドバイス
この台本は、後半にかけての「Aの心理変化」と「Bの変わらない狂気」の対比をいかに丁寧に演じ分けるかがポイントです。
A役の方へ: 前半は、突然の監禁に対する純粋な恐怖と混乱を前面に出して怯えてください。
中盤、鳥の声を聞いた後のモノローグで「Bの弱さ」に気づいた瞬間が一番の見せ場です。ここでスッと声色を低くし、息遣いを落ち着かせることで、二人の立場が逆転した恐ろしさがリスナーに伝わる可能性が高まります。
最後の「ありがとう」は、純粋な感謝ではなく「支配の完了」を意味するような、底知れない優しさで演じるとより魅力的な音声作品に仕上がります。
B役の方へ: 最初から最後まで、純粋にAを愛している無邪気な子供のようなトーンで演じてください。
中盤、嘘がバレそうになった時の「聞こえないよ」というセリフは、Aだけでなく自分自身にも言い聞かせるように、少し焦りや震えを混ぜるのがおすすめです。
Aに受け入れられた最後のシーンでは、世界で一番幸せそうな声を出してください。その無邪気な喜びが、逆に聴く人の恐怖を強く煽る良いスパイスになります。
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